光合成する動物!?

今日は、細胞壁がある動物はいないのかなぁ〜と思って、
お昼頃からずっと調べていました
まず前提として、「細胞壁がないこと」が動物の定義であるならば、
細胞壁のある動物」なんているはずがありません
しかし、「動物の定義」というものがなかなか見つかりません
Wikipediaには

一般には、運動能力と感覚を持つのが大きな特徴とされるが、現在の動物界に含まれる生物すべてに当てはめることが出来ない。以下のような特徴を持つ生物が、現在の意味での動物である。

  • 多細胞性が著しく発達している(寄生性のものには例外もある)。

  • 卵子精子の2種類の異なる半数性の配偶子が受精することにより発生する倍数性の生物である。

  • 発生初期に細胞でできた中空のボールである胚胞を形成する。

  • 体外から養分を摂取する従属栄養的な生物である。

と書かれていますが、どこにも「定義」の二文字はありません
しかし、言い回しからは「定義」に限りなく近いような気がします
ここから、いろいろと寄り道をしながら勉強しました
寄り道はすごいもので、「利己的遺伝子」のページにまで行ったりしました
Wikipediaだけでも52ページも見て回りました



その途中でびっくりするものを見つけてしまったんです
なんと、
光合成するウミウシがいたんです
嚢舌目(のうぜつもく)に属するウミウシのなかには、
エサである海藻の細胞に穴を開けて、
細胞の中の葉緑体などを吸い出すことができる種類があります
人間ならばその葉緑体を消化してしまいますが、
そのウミウシ葉緑体を自らの細胞に取り込み、
光合成させて、その養分を吸収することができます


「『光合成できる』じゃなくて『光合成させる』やん、それ」
って思われかもしれません
ですが、考えてみてください
植物だって、葉緑体がなければ光合成できません、
つまり、植物も葉緑体に『光合成させている』んです


もともと、細胞内にあるミトコンドリア葉緑体は、
αプロテオバクテリアやシアノバクテリアが細胞内で共生したものです
葉緑体はもともと、ちゃんとした生物だったんです
その証拠に、葉緑体には細胞のものとは別に、独自のDNAがあります


しかし、共生するようになってから、
葉緑体のDNAの一部は細胞の核のDNAに依存するようになったため、
葉緑体のDNAはある程度退化し、不完全なものになってしまいました
これにより、葉緑体単体では機能することはできず、
また、長く生きていることができません
そのため、葉緑体のみを培養するということはできません


ところがウミウシの中の葉緑体は、
海藻の細胞と離ればなれになったにもかかわらず、
最長で14ヶ月も機能を維持していたんです
一体どういうことでしょうか


アメリカのメーン大学のMary Rumpho-Kennedy教授による実験の結果、
ウミウシのDNAの中に、海藻から取り込んだDNAが発見されたそうです
これによって、ウミウシの中でも葉緑体が活動できるということです
なぜ海藻のDNAがあるのかは分かっていませんが、
ウミウシの性染色体のDNAからも海藻からのDNAが見つかったそうなので、
葉緑体を機能させる能力は遺伝しているのかも?ということだそうです


ウミウシが藻から葉緑体を吸っている映像



さて、ここでいったん、少し話題を変えます
このウミウシ光合成できるため、
海藻から葉緑体を吸い取ったあとは、
何ヶ月間もえさを食べなくても生きていられます
「Elysia chlorotica」というウミウシに、
「Vaucheria litorea」というエサの藻を2週間食べさせると、
そのあとは何も食べなくても1年ほどの寿命を全うするそうです


「何も食べない」ということは、
無機化合物(二酸化炭素など)や光によって炭素やエネルギーを得ているため、
独立栄養生物だということになります
独立栄養生物は「生産者」であり、このウミウシも例外ではないはずです
で、この記事の上の方のWikipediaからの引用文を見てみてください
従属栄養的な生物である」とかかれています
従属栄養生物とは、「消費者」です


Wikipediaの文章を、
「動物に『多い』ただの『特徴』だ」と考えれば全く問題ありませんが
あの文章を「定義」と捉えるならば、
ウミウシは動物であることを否定されたことになります


生物の分類としては、動物・植物以外にも原生生物や古細菌などがありますが、
多細胞生物は動物か植物か菌類のどれかしかありません
ウミウシを植物や菌類だといえますか?
ほぼすべての人が、「ウミウシは『動物』だ」というでしょう
では、「動物」とは一体なんでしょうか?